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“Use quotation marks sparingly”
添削をしていて気付くのは、日本人の書いた英語論文の中にはやたらと引用符(クォーテーションマーク)を用いたものがあるということです。例えば、団体名や施設名が全て引用符で囲まれていたり、臨床試験における患者の組み入れ基準がそれぞれ引用符に入れられているケースを見かけます。
それらを見ていると、どうも日本語の文章における鉤括弧と全く同じ感覚で引用符を用いられているような気がします。日本語の文章では、ある名詞が固有名詞であるか否かをパッと見て判断するのは難しい場合がありますが、英語では頭文字を大文字にすることによって明確に固有名詞であることを示すことができます。appleをAppleと書くだけで、明確にアイフォンのメーカーもしくはビートルズのレコード・レーベルを頭に浮かべることができるのです。従って、この方法によって既に特定された名詞を、さらに目立たせる必要性はないのです。
引用符はその名のとおり、既存の発言や文章をそのまま引用するときに用いるものです。あるいは、ある単語やフレーズを、一般的な意味とは違う意味で用いるときに、引用符で囲んで表現します。こうしたルールに関わらず、例えば組み入れ基準を一つ一つ引用符で囲むと、読んでいるネイティブはその目的が分からず混乱します。「どこかのガイドラインにでも書いてあったものをそのまま引用しているのだろうか?」などと考えるかもしれません。
もしたしたら、個々の項目を明確に区切るために、引用符で区切るという方法をとった方もいるかもしれません。しかし、そのような心配は無用です。ネイティブは、a, b, and cのように書かれていれば、多少長くても区切りを誤ることはありませんし、どうしても長くなってしまう場合は、各々をセミコロンで区切り、a; b; and cと書けば間違いは起こりません。
科学技術論文などでは、緒言から考察まで一度も引用符を用いずに書けてしまうことも何ら珍しくありません。お手元に雑誌があったらパラパラとめくってみてください。想像以上に引用符が使われていないことに気付くと思いますよ。