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“since”と“because”の使い分け
このところ英語としての自然な語順について取り上げてきました。大事な事柄や新情報を文の後ろに持ってくるのが英語流です。これに関連して、今回は接続詞“since”と“because”について書いてみたいと思います。まず以下の文を見てください。
Since this drug has been linked to cancer in laboratory animals, long-term follow-up is crucial.
という文があったとします。このとき一番重要なメッセージは後半すなわち「長期的な追跡調査が極めて重要である」という部分です。「動物実験で癌との関連がみられた」ことは、「重要である」ことの理由に過ぎませんし、また、この書き手と読み手の間には、「動物実験で癌との関連がみられた」という情報が既に共通認識として存在しているというニュアンスがあります。「ご存知のとおり、動物実験で癌との関連がみられたので・・・」という感じです。
では日本人が頻繁に使う「原因・理由」の接続詞“because”は、上記の文の“since”にとって代わることはできるのでしょうか。状況にもよりますが、ここで“because”を用いるのは得策ではありません。“because”は、「○○である。というのも△△だからだ」というふうに、相手に知られていないもしくは相手が忘れている、あるいは知っているけれども特に強調しておかなければならない理由を提示するニュアンスがあるのです。従って、“because”を使って上記の文を書き換えるとすると、
Long-term follow-up is crucial because this drug has been linked to cancer in laboratory animals.
として、“because”を含む節を後半に置いたほうが自然です。「長期的な追跡調査が極めて重要である。というのも、動物実験で癌との関連がみられたからだ」という感じで、「癌との関連がみられたからこそ」なのだという点がより強調されます。
実際のところ、いきなり“Because…”という節で始まる文をネイティブが書くこともないわけではないのですが、論文を書くにあたっては、前半に“because”節を置く文を全く使わずとも書きあげることが可能です。