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"research and development"は複数扱いなのか
動詞を使用する際に、主語となる名詞が単数形であるか複数形であるかを意識しなければなりませんが、元々数に厳格でない日本語の話者は、どちらが適切かを瞬時に判断することができないことがあります。それでも、会話と違って論文執筆においては文を遡って確認することができるので、ケアレスミスにさえ注意すれば、間違えることはほとんどありません。
単数形の名詞であっても、それが二つ以上連結されてA and Bとなると、通常は複数扱いとなります。例えば、
Nausea and vomiting are common complaints.
などです。ここまではどなたでもお分かりになると思いますが、では、“research and development”はどうでしょうか。学校で教わったルールに基づくと、当然複数扱いとなるように思えますが、実はこれは単数扱いとするのが普通です。このフレーズのようにひと固まりの概念(「研究開発」)として取り扱われることの多いものは、たとえandで連結されていようとも単数扱いとすることがあるのです。
実際、既発表の論文を調べたところ、“research and development is”という表現が圧倒的多数であり、“research and development are”となっていたものは、英語を母国語としないとみられる著者(名前から、日本人や中国人と判断される)によるものばかりでした。こういった慣習は、基本的な文法を学んだだけではなかなか習得できませんが、多くのこなれた英文を読むことによって身につけることができます。
ちなみに、前述の“nausea and vomiting”についていえば、“chemotherapy-induced”(化学療法誘発性の)という枕詞のついた“chemotherapy-induced nausea and vomiting”という表現があり、しばしばCINVなどと呼ばれますが、このようにまとまった概念だと、単数扱いとされることも珍しくありません。