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JAMJE総会とシンポジウムに参加させていただきました。その2

前回のエントリーに続いて、今回も今年のJAMJEシンポジウムについて書きたいと思います。今回のシンポジウムも、興味深いテーマの講演が多く大変興味深いものでしたが、個人的に注目だったのは安間敏雄氏による「研究不正行為の実効性ある対応に向けて」という講演でした。というのも、安間氏は内閣府からのいわば「客演」であり、アカデミアの人々が講演するシンポジウムの中では異色の存在だったからです。とはいえ、今回の大テーマが「不正論文と編集者の責務」であり、「一連の不正論文の是正には、業界内の自浄努力だけでなく、場合によっては法的な整備も含めた国家的な取り組みが必要なのではないか」という考えが広がっていることから、安間氏が迎えられたことは必然でもあり、非常に有益だったと思います。


科学技術イノベーション立国を掲げる以上、研究不正によって社会的な信頼や負託を失うことはこれ以上ないほど由々しき問題と言えますが、具体的な事案に対し個別に対応するだけでは不十分であるというのが安倍総理をはじめとする総合科学技術会議の見解であり、なぜそのようなことが繰り返し起こるのか、その背景を明らかにし是正しない限り、同じことは何度でも繰り返されるでしょう。その背景とは、一つには、この日講演された榎木英介先生も触れられていたようにインパクトファクターの偏重であり、また一つには、杉晴夫先生の指摘されるように、性急に研究結果を求められる現在の研究環境があるのだと思います。


この日は他にも素晴らしい講演がいくつもあり、各雑誌の編集者の方々や研究者の方々が公正な論文発表活動に向けた真摯な取り組みをされていることがよくわかりました。まだJAMJE自体は歴史の浅い団体ですが、日本発の医学論文を下支えする基幹的な存在として今後ますますその影響力を高めて欲しいですし、Topnotchとして何か協力できることがあれば、是非サポートさせていただきたいと考えています。


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