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JAMJE総会とシンポジウムに参加させていただきました。その1
先日開催された日本医学雑誌編集者会議(JAMJE)の第7回総会とシンポジウムにオブザーバーとして参加させていただきました。ご存じない方もいるかと思うので簡単に説明すると、JAMJEは、(1)医学雑誌と編集者の自由と権利の擁護、(2)医学雑誌の質の向上への寄与、(3)著者と医学雑誌・編集者の倫理規範の策定、(4)海外の編集者会議との連携、を掲げて設立された組織です。
総会においては、「日本医学会 医学雑誌編集ガイドライン」の案(厳密には案の案)について報告がありました。これは、日本医学会の分科会を対象に実施されたアンケートの結果を踏まえ、ICMJE、WAME、COPEといった国際標準への準拠を念頭に置いて作成されているもので、医学雑誌編集者のマニュアルとして利用できる内容とすることを前提としています。
同ガイドライン案で注目されるのは、臨床試験の報告論文について公的機関への登録を投稿規程で規定することが望ましいとしていること、そして、「編集者は投稿規程の審査時には登録システムにアクセスして、実際に臨床試験登録がなされているかを確認する必要がある」としているところです。これはpublication biasの最小化に向けた前進といえます。
もうひとつ、臨床試験におけるsponsorとfunderの区別の重要性についても述べられています。JAMJEでは、前者を「主宰者」、後者を「資金提供者」としており、今回のガイドライン案では、「“funder”は狭義には「資金提供者」であるが、広義には「労務提供者」も含む」としています。この点は、COIの開示の重要性が謳われる昨今、クリアにしていくべき部分だといえます。特に、“sponsor”に関しては、製薬企業周辺の文書では専ら「治験依頼者」と訳されており、「主宰者」との語感の乖離が甚だしいように感じられます。
語感に関して言うと、ガイドライン案では患者に言及するときの表現についても触れられています。すなわち、
臨床研究の対象者を指す語は一般的に“human subjects”であり「被験者」「研究対象者」などと呼称されるが、観察研究においてこの表現はマッチしない。むしろ研究の一部を担う主体として“participants”(参加者)という表現が広がりつつある
ということです。もっとも、本案でも指摘されているのですが、遡及的なデータ収集をベースに行われる研究などのように、患者本人が明確に「参加した」意識を持たないケースもあるので、「参加者」という表現が馴染まない場合もあります。いずれにせよ、こうした表現の検討が丁寧になされていること自体、医療現場の人間として倫理観を持って患者と接していることの証左であるともいえるのではないでしょうか。ちなみに、今回のシンポジウムでは、京都大学大学院医学研究科の宮崎貴久子先生よりICMJEの2013年改訂についての説明もありましたが、同改訂においても、以前「研究における被験者(human subjects)と実験動物の保護」となっていたものが「研究参加者(research participants)の保護」にとって代わられており、上述の流れと同様の動きを感じ取ることができます。
他にもご紹介したい内容があるのですが、一度ではお伝えしきれないので続きは次回のエントリーで。それでは。
注:今回のガイドライン案はあくまで案ですので、最終化されたときには多少異なる部分も出てくるかもしれません。あくまで第三者による報告と捉えてください。