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“Following”の多用と懸垂分詞の話題
論文で頻繁に使用されるにもかかわらず、必ずしも望ましいかたちで使われていない単語というのがあります。今回はその中のひとつ、“following”を取り上げたいと思います。まず、以下の文を見てください。
Following a meal, the animal suddenly collapsed.
この文の著者の意図は間違いなく読みとれるでしょうか? このような文の場合、著者は大抵「餌を食べた後、動物は突然倒れた」という意図で書いています。しかし、それは“following”を前置詞とみなしたからこそであって、分詞とみなしたら果たしてどうでしょうか。「そんなバカな」と思うなかれ、動物がエサを追うというシーンは容易に想像できるはずです。つまり、「餌を追いかけている最中に、動物は突然倒れた」とも読めてしまうわけです。
なぜこんなシンプルな文なのに、こんな誤解が生じてしまうのでしょうか? この誤解を回避する方法はあるでしょうか?
もうお分かりだと思います。“following”を“after”に変えるだけで解決します。主に接続詞や前置詞として用いられる“after”は正にこういった表現にぴったりの単語です。一方の“following”は、動詞である“follow”が変化したものであることは言うまでもなく、また“following”のかたちでも、名詞や形容詞として頻繁に用いられます。ですから、このうえ“following”に前置詞の役割も担わせようというのは得策ではないのです。
加えて、“following”は“after”よりも文字数が多いのですから、敢えて“following”を用いる理由は見当たらないのです。
話は逸れますが、“following”に限らず、分詞を用いるときは意味上の主語が明確になっているか必ず確認してください。ある企業の説明書で以下のような文をみかけたことがあります。
"When the product is broken following the instruction manual, we replace the product or repair the product."
おそらく、「説明書のとおりに使用して故障が発生した場合、当該製品を交換するか、修理します」というつもりで書かれたのだと思いますが。この文にはいろいろ細かい点で改善の余地があります。“following”に関して言うと、ここでの“following”は前置詞としては使われていません(「説明書の後で」では意味が通じないので)。とすると分詞なのですが、では「説明書に従う」行為をするのは誰でしょうか。この製品を使う人のはずです。製品自体が説明書を読んで動くなら話は別ですが、そんな製品は聞いたことがありません。つまりこの文の問題点(のひとつ)は、“following”の意味上の主語が明らかになっていないことです。
英語の問題とは直接関係ありませんが、上記の文を読んで「交換や修理は無料でしてくれるのだろうか」と考えた人は鋭いと思います。