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“As a result”の誤用

日本人研究者による論文では、「考察」のセクションを以下のようなセンテンスで始める方が多いです。


「本試験で我々は○○を検討した。その結果、○○であった。」


この文は、日本語である限りにおいて100%正しいです。しかし、これを英語に翻訳して英文誌に投稿するのであれば、


“In this study, we investigated XX. As a result, YY was…”


という文は、多くの場合好ましくありません。


まず、“as a result”というフレーズは、その直前に言及した事柄との間に因果関係がある事柄を述べるときに使うものであり、いわば“because”と逆の関係にあるフレーズなのです。例えば、


A did B. As a result, C did D


という文があるとすれば、それは、


C did D because A did B.


と書き換えても成り立つものでなければなりません。しかし、冒頭で述べたような日本語文では、「本試験で我々は○○症の罹患率の男女差を検討した。その結果、全年齢層で、男性は女性よりも有意に罹患率が高かった」などのような内容のものがほとんどであり、「検討したこと」と「男性の罹患率が高かったこと」との間に因果関係がないのです。(もし因果関係があるのなら、「全年齢層で、男性は女性よりも有意に罹患率が高かった。なぜなら、○○症の罹患率の男女差を検討したためである」という文が成り立つはずです。)


このようなとき、英文では、


“In this study, we investigated XX. The results showed that…”


とすれば問題ありません。もっと言えば、「何を検討したか」は前のセクションまでで十分述べているはずですから、


“Our results showed that…”


だけで事足りることも多いでしょう。


さて、先ほど「多くの場合好ましくありません」と書きましたが、なぜ「常に」ではなく「多くの場合」なのかというと、


“In this study, we investigated XX. As a result,…”


が問題なく成立する場合もあり得るからです。例えば、「我々は○○を検討した。その結果、患者団体から懸念の声があがった」「我々は○○を検討した。その結果、研究費が枯渇した」などの事例がもしあれば、そこには「検討したこと」と「懸念の声があがったこと」もしくは「研究費が枯渇したこと」の間に因果関係があるので、“as a result”の使用が適切となります。


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