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略語の「リスクとベネフィット」

略語は上手に使うと非常に効果的です。例えば、救急医療の分野で用いられる略語であるCSCATTT(Command and Control, Safety, Communications, Assessment, Triage, Treatment, and Transport)などは、毎回フルで綴っていたら紙面の無駄遣いですし、読み手も効率的に理解することができなくなってしまうでしょう。


しかし、日本人の著者、とりわけ医療現場で仕事をされている方々の論文は、略語を使いすぎる傾向があります。おそらく日常的に略語を使用してコミュニケーションをとっているからだと思いますが、論文の校正をしていて特に気になるのは、


略すまでもないのに略している


というケースが多いことです。具体的には、(1)当該論文中に何度も出てくるわけでもないのに略語を使用している場合や、(2)元々長いフレーズでもないのにあえて略している場合があります。特に日本人著者によくみられるのが(2)で、極端な例では、元来単一の語であるにもかかわらずその最初の3文字くらいをとって略語化しているのを見かけます。cetuximabという薬剤がありますが、これをCetやCETと表記するのが典型例です。なぜ大して長くもない単語をわざわざ略す必要があるのでしょうか。略語の使用にあたっては、その「リスクとベネフィット」を天秤にかけ、「ベネフィット」が大きいときにのみ用いるべきです。


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