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混同しやすいcritical(ly)とnegative(ly)
論文を査読したりドラフト版の論文に手を加えたりするとき、criticalに行うことが重要です。ただ、このcriticalという語は「批判的な」という日本語に訳されることが多く、あたかも最初から論文の内容に否定的な態度で接することを是としているかのように思えます。しかし、このような文脈で用いられるcritical(ly)とは、
“carefully, in order to judge what the good and bad aspects of something are”
つまり、「物事の良い面と悪い面を判断できるだけの慎重さを伴っている状態」ということです。したがって、何もハナから否定的な立場をとる必要はないのです。そのような否定的な態度はむしろcriticalではなくnegativeといえます。
実際には、査読者がnegativeな態度で論文に接してしまうことが多いという現実があります。査読者として指名される人の多くは実績を積んだ多忙な研究者であり、率直に言って他人の論文を読んでいる暇はないのですが、科学の発展に寄与せんとする志や使命感で引き受けています。こうした状況の中、「査読者にフェアな報酬を与えるにはどうすればよいか」という課題に対処するため、いくつかの提案がなされてきていますが、今のところ現状を大きく変える流れにはなっていません。論文を投稿する側からすれば、査読者が善意ベースで査読してくれているということを念頭において、少しでもnegativeはポジションをニュートラルに、あるいはpositiveな方向へと移行できるように工夫する必要があります。