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査読者に嫌われないために

慶應義塾大学の佐谷秀行先生によると、査読者に嫌われる論文の特徴として「IntrodutionとDiscussionが長い」というのがあるそうです。これに関しては100%同意できます。論文の添削をしていると、IntroductionやDiscussionが他のセクションに比してやけに長い論文に頻繁に遭遇します。


なぜこのようなことが起こるのか。


Introductionに関して言えば、典型的なのは、やたらと文献の引用をしていたりそれらについて考察を加えたりしているケースです。Introductionにおける引用は、あくまで本論にスムースに入ってもらうための一助として行うものであるべきであり、それ以上でもそれ以下でもありません。そもそも、「考察」というセクションがわざわざ個別に設けられているのに、なぜIntroductionで考察を行う必要があるのでしょうか。読み手の立場で考えれば容易にわかることですが、前置きが長くてなかなか本論に入らないストーリーなんて、よほど暇な人でもない限り読まないでしょう。


Discussionに関しては、とにかくResultsを繰り返すパターンが非常に多いです。せっかくResultsやTables & Figuresで結果を提示したのに、なぜまたDiscussionで同じことを述べる必要があるのでしょうか。例えば、Resultsにおいて、


「A群およびB群における有害事象の発現率は、それぞれ10%および20%であった」


と述べたとしましょう。


この後、Discussionで、


「A群およびB群における有害事象の発現率は、それぞれ10%および20%であった。A群よりB群のほうが発現率が高かった理由は・・・」


などと書くケースが非常に多いのですが、一つめの文はResultsで既に述べた内容であり、繰り返す必要はありません。「A群よりB群のほうが有害事象の発現率が高かった理由は・・・」と書き出せが事足ります。どうしても数字を入れたいとしても、「A群よりB群のほうが有害事象の発現率が高かった(10% vs. 20%)理由は・・・」とすれば十分でしょう。英語に不慣れな著者による論文だと、一語一句同じ文がResultsとDiscussionに一文ずつ入っていることも珍しくなく、稚拙な印象がぬぐえません。


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