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「文法なんかやっているから話せない」という言説について

近頃発刊された東京大学の名誉教授である行方昭夫氏の著書「英会話不要論」(文藝春秋)を読ませていただきました。例によって新書にありがちな過激なタイトルとなっていますが、氏はもちろん「学校教育において英会話など不要」という立場をとっているわけではありません。ただ、このところ存在感を増している「実用的な英語こそ重要」という論調と、その後押しを受けて展開される、読み書きではなく会話重視の教育方針に警鐘を鳴らしています。また、「私は文法の学習ばかりさせられたから会話ができるようにならなかった」という訴えが如何に的外れであるかについて、穏やかかつ理知的な文章で説明されています。


大学用の英語テキストに関して述べた項に共感できる部分があったのでご紹介します。


もう一つの流行は、会話を中心とするテキストである。大学に入って来る学生の中に、高校までの文法と訳読中心の授業に飽きたから、ぜひ会話を教えて欲しいと望む者が少なくない。これは、いわゆる役に立つ英語への社会からの要請とも一致するわけである。ただし、役に立つか否かを卑近な実用性という次元でのみとらえるならば、大学での勉学はすべて「役に立たない」のではないか。


目先の有用性を重視するあまり長期的な成果を逃がしてしまうリスクがあるということだと思います。この問題は、先日このブログでも紹介した「論文捏造はなぜ起きたのか?」(杉晴夫著、光文社)において提起されていた、政府による「競争的研究資金」の導入とそれによる我が国の生命科学の衰退と通底する部分があるように思います。予算をはじめとして、投入できる資源が限られてくると、すぐに結果の出そうな課題ばかりに目が行ってしまい、長期的な視点で戦略的に取り組むことが難しくなってきます。短期的な結果と中長期的な結果をいかに両立するかという戦略的な視点が必要なのだと思います。また、遠回りだと考えていた道が実は一番の近道だったというケースもあるはずです。英語学習に関して言えば、結局のところ、文法も碌に学んでいないようでは、英会話もまともにできない。日本語と英語は構造の大きく異なる言語ですから、日本語を母語とする英語学習者は、早期に学ぶことによるメリットを享受できると思います。


ちなみに、前述の抜粋は大学のテキストに関する記述ですが、氏は「大学の英語で文法を学ぶべき」と言っているのではもちろんありません。


本書は英語教育者や学習者、あるいは翻訳者向けの本と言え、トップノッチのお客様向けとは言い難いものがありますが、数時間で読めてしまう新書という体裁ですので、気になる方は是非チェックしてみてください。


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