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多重出版を避けるために
出版倫理の観点から、多重出版は厳しく禁じられています。英語ではduplicate publication、multiple publication、あるいはredundant publicationなどと呼ばれます。一言でいえば、「本質的に同じ内容の論文を複数回出版すること」であり、一旦日本語の論文として発表した論文を英語に訳して海外雑誌で発表することも多重出版と考えられています。
多重出版による弊害は、とりわけ紙での出版が中心となる時代においては甚大です。紙面には物理的に制限があり、投稿される多くの論文の中から発表に値する論文を選択する作業は編集者にとって常に頭を悩ませる問題です。既に世に出た知見の発表に貴重な紙面を割いてしまうことは、他の重要な論文が世に出る機会を奪うことになります。今日では、紙媒体では出版せずオンラインのみでの刊行を行う雑誌もありますが、それでも紙面の問題以外に悪影響があります。複数の論文からのデータをもとに包括的にエビデンスの強さを検討するメタアナリシスという手法がありますが、これは通常あるテーマに基づいて既発表のあらゆる論文を扱うので、同じ内容の論文が重複して世に出ているとそのぶん当該エビデンスの比重が上がってしまうのです。これはメタアナリシスの価値を大きく損なう原因となります。
一般に、学会において抄録として発表しただけのものであれば、改めてフルサイズの論文として発表することは認められています。しかし、多重出版に該当するのかどうか確信が持てないケースもあるでしょう。その場合は、これから投稿しようと考えている雑誌に問い合わせてみるという労を惜しむべきではありません。実際、Journal of Anesthesiaという雑誌では、過去に発表した際の抄録と表紙ページを送って確認することを求めています。
"Authors who have any question concerning what may constitute prior publication should submit the title page and abstract of previously published material with articles intended for publication in the Journal of Anesthesia."
この手の問い合わせのメールに対しては、忙しい雑誌社のスタッフでも意外とすぐに返事をくれるものです。
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