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動詞を使い分けるメリット
ひとまとまりの英語の文章を書くにあたって、同じ単語ばかり何度も使用するのは望ましくないとされています。もちろん、医学論文をはじめとする科学技術論文においては正確さが重要ですので、とりわけ名詞に関しては、「同じものを指すのに別の単語を用いる」というのは好ましいことではありません。なぜなら、別の呼び方をすることによって、読み手が「別のものに言及している(かもしれない)」と頭の片隅に入れて読むことになるからです。
さて「名詞に関しては」と書きましたが、では他の品詞はどうなのか。どの単語にもそれに対応する意味があり、より正確に伝達することを第一に考えるべきですし、また冠詞や前置詞のように、他の単語に変えるわけにはいかないものもたくさんあります。この点、動詞は比較的柔軟に変えることができるといえます。英語における動詞の重要性については聞いたことがある方もいらっしゃるかと思います。「文を作るにはまず動詞を決めよ」という専門家もいます。
では、動詞を決定する際ですが、日本人の英語学習者が(その律義さ故なのか)いつもお決まりの単語ばかり使っているのをよくみかけます。例えば、「(試験等を)実施した」と言いたいときに、“perform”一辺倒あるいは“conduct”一辺倒という方は多いのではないでしょうか。候補としては他にcarry outやimplement等がありますし、受動態の文であればbe doneやbe undertaken等も考えられるかもしれません。
「意味が間違って伝わらなければいい」という考え方であれば、このような工夫は必要ないかもしれません。しかし、それでは英文ライティングの腕は上達しにくいですし、「何となく読みにくい」というだけで、査読者から全体的な書き直しを要求されるきっかけになる可能性もあります。
同じ(ほぼ同じ)意味の単語を使い分けることの意味は、何も「私はこんなにいろんな単語を知っています」とアピールすることではありません。読むことの楽しみを読み手に提供することに加え、読みやすさという実際的なメリットもあるのです。例えば、新聞のようにフォントが小さく1ページに文字がぎっしり詰まっているような文書を読んでいるときに、どこを読んでいるのか一瞬わからなくなってしまうことがあります。このようなとき、使い分けた単語が目印の役目を果たしてくれます。