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「動物の命を捧げる」
科学技術論文では、現在でも「実験動物を安楽死処分した」というとき等に“sacrifice”という動詞が使われることがあります。例えば、
The rats were sacrificed under ether anesthesia.
というような文はごく一般的にみられます。
「殺す」という意味をストレートに表すのを避ける目的で、あるいは「犠牲にしている」という意識の中で、“kill”以外の語を用いるというのは理解できるのですが、かといって、“sacrifice”が果たして最適な動詞かというとやや疑問もあります。というのも、この“sacrifice”という動詞は「いけにえを差し出す」「神に捧げものをする」といった意味を持つからです。実際、科学技術論文のような客観性の求められるドキュメントには、むしろ“kill”のほうが適切なのではないかという主張も当然あり得ます。死を婉曲的に表現することが求められるのであれば、“The patient died.”ではなく“The patient passed away.”が好まれてもよさそうなものですが、科学技術論文においては、めったにこういう表現は用いません。
雑誌によっては、“sacrifice”の使用を控えるよう規程に示しているものもありますので注意してください。下記はDiabetologiaという雑誌の投稿規程から抜粋したものです。
“Animals should be described as being killed rather than sacrificed.”