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利益相反と秘密保持契約

透明性(transparency)の重要性が叫ばれる今日、利益相反に関する情報をきちんと開示することが求められるようになってきました。一般的には論文の後段、「結論」と「謝辞」の間あたりにConflicts of Interestの項を設け、読者が論文の内容を適切に解釈できるようにする必要があります。例えば、論文中で特定の医薬品について言及しており、かつ当該医薬品の製造元と著者の間に講演料の授受などの金銭的なやりとりがあった場合は、その事実を開示することは非常に重要です。


しかし、ここで一つの疑問が生じます。著者とそうした製薬会社等の第三者との間で事前に締結された契約のために、具体的な情報開示ができないような場合はないのでしょうか。またそのような場合、論文を投稿する際にどのような手続きをすればよいのでしょうか。実はこのようなケースは十分想定されるものであるにも関わらず、各ジャーナルの投稿規程では、具体的な指示事項はあまりみかけません。そんな中、Nature Reviews Rheumatologyの規程には丁寧な説明がありますので、参考までにご紹介しましょう。


‘We recognize that some authors might be bound by confidentiality agreements. In such cases, itemized disclosure may be replaced by suitable wording, such as: “The author declares that he is bound by confidentiality agreements preventing disclosure of his competing interests.”’


要するに、秘密保持契約を締結しているために利益相反の内容詳細を提示できない場合は、その旨を明示することで許容されることがある、ということです。もっとも、事前に契約を結んでいるからといって非開示が正当化されてよいのかという問題はありますし、出版倫理の観点からすれば、利益相反の開示を禁じる契約を事前に結ぶ行為自体を改めるべきではないかという考えも出てくるでしょう。

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