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利益相反と情報開示
2000年代の後半ごろから、製薬企業から医療関係者に提供される資金に関する情報開示を求める動きがあり、国内でも透明性ガイドライン(日本製薬工業協会)が策定されるなど、利益相反への対策は少しずつ進んでいるように思われます。
医師と製薬企業の利益相反についていえば、その歴史は古く、一世紀以上前からあったといわれています。精神分析学者としてあまりにも有名なジークムント・フロイトも、利益相反に関わっていたといわれています。彼は、中毒性のない万能薬としてコカインをとりあげた論文を多数執筆するのですが、結果的にはヨーロッパ中でコカイン中毒がまん延してしまいました。もともとモルヒネ等が使われていたこの領域で、なぜフロイトはかくも熱心にコカインを推薦するに至ったか。実は、フロイトは、コカインの抽出物で作られる薬のメーカーから資金提供を受けていました。
その後、コカインには中毒性も毒性もあることが明らかとなり、医薬品としての価値は無くなっていくのですが、フロイトがコカインのこうした性質をどこまで把握していたかについてはここでは触れません。もちろん、研究の結果として毒性があることが判明していたにも関わらず公表していなかったのであれば問題ですが、それ以前に、ある医師が特定の薬剤を強力に推す論文を(多く)書くという事象が起こったときに、当該医師が製薬企業から資金提供を受けていたのかどうかを第三者が知ることができるか否かが重要です。透明性の向上により、個々の論文に対しより客観性の高い評価が行われるようになることが望まれます。