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冠詞の使い方に悩んでいるのは日本人だけではない
「正しい冠詞の使い方」だけをテーマにした本が存在するほど、冠詞の使い方に苦労する日本人ですが、これは無理もないことです。英語の冠詞に対応するものが日本語にはないのですから当然と言えば当然です。では、この悩みは、世界中で日本人研究者だけが背負わなければならないハンデなのでしょうか。
英語論文の出版数を年々増加している中国ですが、中国人研究者の執筆した英語の論文を数多く添削したというFelicia Brittman氏の論文「The most common habits from more than 200 English papers written by graduate Chinese engineering students」を読むと、中国人研究者の書く論文の問題点は、日本人研究者のそれと少なからず似ていることがわかります。冠詞の問題を例にとると、氏の論文では以下のように書かれています。
“The single most common habit os the omission of articles a, an, and the. This occurs because Mandarin has no direct equivalent of articles and...”
日本語同様、中国語にも、英語の冠詞に相当するものがないため、冠詞の付け忘れが頻繁に起こるようです。
また、Brittman氏は以下のように指摘しています。
“Chinese writers often preface the main topic of a sentence by first stating the purpose, location, reason, examples and conditions as introductory elements.”
文を書くときに、メイントピックから書き始めず、目的や場所、理由、例、条件を先に書く傾向があるというのです。これもまた、日本人研究者による論文でよく見られる傾向です。具体的に挙げられている良い例と悪い例は以下のとおりです。
“Incorrect: For the application in automatic interiors, this paper studies the nesting optimization problem in leather manufacturing.
Correct: This paper studies the nesting optimization problem in leather manufacturing for application in automobile interiors.”
“This paper studies…”がメイントピックであるにもかかわらず、副詞節から文を書き始めてしまっているという問題です。日本人研究者の論文では「~に関しては、~であった」をそのまま英語に置き換えたような英文が散見されますが、(常にそれが悪いというわけではありませんが)これと同様の問題が中国人の論文でもみられるようです。
さらに、時間を示すフレーズも文頭に置く傾向があるようで、“Tendency of placing phrases which indicate time at the beginning of a sentence”と見出しで述べられていました。この傾向も日本人研究者による論文で同様にみられます。
最後に、これは日本人研究者による論文で顕著にみられる傾向ではないのですが、氏によると、中国人研究者の書く英文は(各々のセンテンスが)非常に長くなることがあるそうです。中国語から英語に直接翻訳するとそうした結果になるとのことなのですが、実際に読んでみると、かなり苦痛を覚えます。ネイティブの書いた文法的に正しい英文であっても、一文が長くなると読みづらくはなるものですが、ただでさえ文法的にパーフェクトといえない文が70~80以上もの単語から成り立っていたら、読むのも一苦労。このあたりは、書いた本人にはわからない感覚だったりしますので、やはりネイティブによる校正が不可欠と言えそうです。