Topnotch
ブログはじめました。
この度Topnotchブログのページを作りました。ここでは、科学雑誌の投稿規程の中で興味深いものを随時ご紹介していこうと考えておりますので、読み物として楽しんでいただければ幸いです。最初の記事なので、イントロダクションとしてTopnotchの誕生秘話についてまず書きたいと思います。秘話といっても、何も特別なストーリーがあるわけではありませんが。
急に重い話題になってしまうのですが、私の母は61歳のときに他界しました。癌でした。父と共働きで3人の子供を育ててくれた母でしたが、「定年退職したらボランティアをしながら悠々自適な暮らしをする」という夢は叶えられませんでした。地方都市で育った私でしたが、大学進学以後は地元を離れて生活しており、碌に看病もできずに母の亡くなる日を迎えてしまいました。
正直に言って、あのときほど大きな喪失感や無力感を感じたことはありませんでした。しかし、否、だからこそでしょうか、そのとき明らかに私の中で何かが変わりました。具体的に言えば、「母のように苦しんでいる人の助けになりたい」と思いました。このような想いは、医師を志している方々や現役の医師の先生方であれば常に心に灯っている灯台のようなものだと思います。しかし、私は母を失うまでそんな想いを抱いたことがありませんでした。そこから、「自分に何ができるだろうか」と真剣に悩み、考え抜きました。私には今から医師や研究者を目指すのは非現実的なように思われました。しかし、幸い私には英語を読み書きする能力が備わっていました。加えて、英語を母国語とする仲間もいました。だとすれば、苦しんでいる人を自らの手で治療したり新しい薬を開発することはできないけれども、その役割を担う人々が新たな知見を世に発信する手伝いができるはずだと考えました。大学でマスコミュニケーション学を専門に学び、20代のときに出版社に勤務した経験が生かせるときが来たのです。というよりも、それらの経験はすべてこのためにあったのではないかとすら感じました。
とはいえ、具体的なビジョンが浮かんでいたわけではありませんでした。先述の願望を達成し、世の役に立ちながら、ビジネスとしても成り立つにはどうすればいいのか。構想を練るのは簡単ではありませんでした。「英語を母国語とする仲間」と言いましたが、ビジネスとしてやる以上は、馴れ合いではなく互いに高めあえる真のパートナーを味方につけることも不可欠でした。
ちょっと話は逸れるのですが、日本のロックバンド、Mr. Childrenの”Everything (It’s you)”という曲をご存知でしょうか。この曲の冒頭に以下のような歌詞があるのですが、恥ずかしながら私は聴くたびに心が震え涙が出そうになります。
「世間知らずだった少年時代から自分だけを信じてきたけど
心ある人の支えの中で何とか生きてる現在の僕で」
初めて聴いたときは10代の終わりでしたが、まるで頭をガツンと殴られたような衝撃を受けたのを今でもはっきりと覚えています。当時の自分の心境を代弁するような歌詞だったからだと思います。もちろん今の私は当時とは違うのですが、「心ある人の支えの中で生かされている」という想いは、むしろ今のほうが強いかも知れません。だからこそ、今聴いても心を揺さぶられるのだと思います。
閑話休題。Topnotchが実際に立ちあがるまでには、構想を練り、信頼できる仲間を得るうえで多くの困難に直面しましたが、それでも私の信念が揺らぐことは一度もありませんでした。Topnotchのミッションは単に英文校正サービスを提供することではなく、実際に研究者の方々が書かれた論文がジャーナルに受理され公表されることであり、その結果として科学の進歩に寄与することです。お客様に「アクセプトされたよ」と言っていただいた瞬間の喜びは、「お客様に満足いただけた」という安堵の喜びであるだけでなく、正直に言えば、「科学の発展に微力ながら貢献できた」という至上の喜びでもあります。Topnotchでの日々は、そのような喜びを与えてくださるすべてのお客様に対し感謝を捧げる日々です。