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ネイティブでも間違えるスペリング
論文におけるスペリングの間違いは、日本人をはじめとするノンネイティブの著者が犯すものと考えている方が多いと思います。しかし、実際には、ノンネイティブの著者は自身が不完全な英語を書いているという自覚があるため、MS Wordのスペルチェッカーを用いるなどしてスペリングの誤りを防いでいることが多いです。一方、ネイティブの著者の中には、スペリングミスを自らが犯すとは考えておらず、スペルチェックをかけずに書き終えてしまう人がいます。
今年の3月にActa Dermato-Venereologicaで公開された、Alan B. Fleischer, Jr.氏の短報(Increasing Incidence Within PubMed of the Use of the Misspelling "Pruritis" (sic) Instead of "Pruritus" for Itch)を読むと、スペリングの間違いはネイティブも犯すということがわかります。同論文の中でFleischer, Jr.氏は、「掻痒」を意味する“pruritus”が誤って“pruritis”と綴られるケースが近年増えているということを指摘するとともに、その間違いの多く(60%)が、英語を第一言語とするアメリカ、イギリス、オーストラリア、インド、アイルランドの著者による論文でみられるとしています。グラフを見ると、アメリカとインド、とりわけアメリカの占める割合が高く、この単語のスペリングがネイティブにとって間違えやすいものであることを示唆しています。
そもそも英語に不慣れな著者の方だと、はじめから「掻痒」を意味する英語をおぼろげにしか記憶しておらず、論文執筆時に辞書等で確認してから書くという場合もあるでしょう。そのような場合であっても、不注意でタイピングを間違えてしまうことは有り得るわけで、コンピュータのスペルチェッカーの使用は必須でしょう。
ところで、上述の短報によると、Fleischer, Jr.氏は他の医師からa member of the “spelling police”(「スペリング警察」の一員)と名付けられたことがあるとか。よほどスペリングの誤りを見つけるのが得意な方なのでしょうか。