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ジャーナルの否定的な判断に対するリアクションの方法

投稿した論文が最終的にリジェクトに終わることは珍しいことではありません。とりわけ、自信を持って投稿した論文が査読すら受けることができずあえなくリジェクトになってしまったら、大きな失望を味わうことになるのも仕方ありません。「失望」と書きましたが、研究者の中には、失望だけでなくある種の怒りを感じる方もいらっしゃいます。もちろんそうした怒りは、論文の内容に自身を持っていることの裏返しでもあると思いますが、ではそのやり場のない気持ちはどう整理したらよいのでしょうか。リジェクトされてしまったジャーナルが最大のターゲットであったことを前提として考えてみます。


まず、リジェクトを知らせるメール(現在ではほぼ例外なく1通のメールで通知されます)を読んで、少しでも怒りや狼狽の感情が生まれたならば、その場ですぐに返信はしないことです。リジェクトは、著者に次なるステップを促すものではありませんから、心情が乱れた状態で急いで返事をしても何もよいことはありません。いわば、夜中に気持ちが高ぶって書きあげたラブレターを夜明け前に投函してしまうようなものです。ここはグッとこらえて、とりあえず1日じっくり自分の中で気持ちを整理しましょう。


ここで、通常であれば次のターゲットジャーナルに向けて適宜見直しと書きかえを進める準備をすればよいのですが、上述のとおり、今回は第一目標のジャーナルであったため、簡単に諦めることができません。そこで、気持ちも落ち着いたところで、もう一度リジェクトを通知するメールを読んでみましょう。もしメール中にリジェクトの理由が書かれていたら、それも詳細に書かれていたら、運がよいです。実際、大抵の場合は「出版に値しない」とか「非常に多くの投稿があるのでほんの一握りの論文しか載せられない」といったような、「反論のしようがない理由」でリジェクトされるものです。論文の内容に踏み込んで、欠点を指摘したうえでリジェクトを通知してくれるのは、むしろ親切と言ってもいいでしょう。


指摘された内容が、もし誤解に起因するものであったなら、対処次第では好転できるチャンスがありますので、誤解であることを述べたうえで再考を依頼してみましょう。ただし、誤解した側を責めるような表現は慎んだほうが賢明です。誤解した原因が読み手の読解能力によるものとは限らず、むしろ論文の表現が紛らわしいからかもしれないからです。いや、仮に読み手の読解能力が主因だとしても、それを激しく責めることで得することは何もありません。「誤解されている気がするので再考願えませんでしょうか。私の論旨は○○であり、××ではありません。必要であれば書き換える用意がありますのでよろしくお願いします」くらいの丁寧さが適切です。


実際は、明らかな誤解によってリジェクトに至った場合を除き、リジェクトの決定が覆ることはほとんどありません。「(チーフ)エディターによるアクセプト/リジェクトの決定は最終決定とします」(“The Editor’s decision is final”)と投稿規程に明示しているジャーナルも多いです。加えて、誤解のためにリジェクトに至った場合でも、その後の著者からのリアクションがスムースなコミュニケーションを生まず、結局事を荒立てるだけで終わるケースもあるでしょうから、実質的に判定が覆ることは稀と言ってよいでしょう。それでも“チャレンジ”の機会を提供しているジャーナルはありますので、可能性があるのであれば“トライ”してみてください。Clinical Lymphoma, Myeloma & Leukemiaというジャーナルの規程では、下記のとおり決定から2カ月以内に異議申し立てをするよう定めています。


“Authors who wish to object to an unfavorable decision must do so within two months of notification of a decision.”


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